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一般社団法人デジラボビューティ

デジラボビューティ白書 No.2

AIは「使う」から「評価する」へ

美容業界が知っておきたい「AIセーフティ評価」の考え方

AISI・PMDAの一次資料から、一般社団法人デジラボビューティ 代表理事 鎌田麻央が読み解く
発信:一般社団法人デジラボビューティ
情報基準日:2026年9月25日

著者:代表理事 鎌田麻央読了目安:約20分(9,594文字・毎分500文字換算)公開日:2026-09-27
目次22項目から読みたい節へ
  1. デジラボビューティから皆さまへ
  2. 今回参照した公的資料について
  3. 最初に知っておきたい5つのこと
  4. 1.AIは「使えるか」だけでなく「安全に使い続けられるか」へ
  5. 2.AISIの「AIセーフティに関する評価観点ガイド」とは
  6. 3.「観測と制御」が美容AIでも重要になる理由
  7. 4.AISIがヘルスケア領域専用のガイドを作った意味
  8. 5.ヘルスケアガイドが整理した「10の評価観点」
  9. 6.安全性評価は「導入時の一回」で終わらない
  10. 7.モデルだけでなく「AIプロダクト全体」を見る
  11. 8.日本では「AIを評価する環境」そのものも整備されている
  12. 9.PMDAが「生成AIを活用したプログラム医療機器」のDraftを公表
  13. 10.PMDA Draftから見える、生成AI特有の難しさ
  14. 11.美容AIと医療AIを、同じものとして扱わない
  15. 12.美容AIで私たちが確認したい8つの問い
  16. 13.顔・肌画像を扱うAIは、出力だけを見ればよいわけではない
  17. 14.Human-in-the-Loopは「人が画面を見るだけ」ではない
  18. 15.モデル更新後も「同じAI」とは限らない
  19. 16.美容事業者が今から始められる5つのこと
  20. 17.デジラボビューティが美容業界に伝えたいこと
  21. 参考資料
  22. 本稿の位置づけ

デジラボビューティから皆さまへ

私はこの数か月、AIに関する国内外の制度や公的資料を追いながら、「美容業界では、AIをどこまで理解して使うべきなのか」を考え続けてきました。

白書 No.1では、EU AI法第50条の透明性義務を取り上げました。そこでは、AIを使ったものを必要な場面でどう伝えるのか、人がAIと現実を区別できる環境をどう整えるのか、という「透明性」の考え方を整理しました。

その次に私が美容業界の皆さまと共有したいのが、AIをどう評価するのかという問題です。

生成AIは、文章を作るだけの道具から、検索し、判断し、提案し、外部システムを操作するAIエージェントへと進んでいます。美容の現場でも、AIカウンセリング、商品提案、予約対応、顧客管理、文章作成など、AIが担える仕事は急速に増えています。

便利になるほど、私はもう一つの問いが必要だと思っています。

そのAIは、何を根拠に「安全に使える」と判断するのでしょうか。

日本では、AIセーフティ・インスティテュート(AISI)がAIの安全性評価に関するガイドを継続的に整備しています。2026年には、AIエージェントを踏まえた評価観点の更新、ヘルスケア領域に特化した評価ガイド、AIセーフティ評価環境の検討などが進みました。

さらにPMDA(医薬品医療機器総合機構)は、2026年9月、生成AIを活用したプログラム医療機器について審査ポイントのDraftを公表し、意見募集を開始しています。

もちろん、美容AIのすべてが医療機器になるわけではありません。AISIのヘルスケアガイドやPMDAの審査ポイントを、そのまま一般の美容サービスに適用するものでもありません。

それでも、AIの目的を決める、リスクを考える、出力を検証する、人が介入できるようにする、運用後も監視するという考え方は、美容業界がAIを長く信頼して使うためにも知っておく価値があります。

この白書では、AISIとPMDAの一次資料をもとに、私が美容業界の立場から「今、何を知っておくべきか」を整理します。

一般社団法人デジラボビューティ 代表理事 鎌田麻央


今回参照した公的資料について

本稿では、主に次の日本の公的資料を参照しています。

AISIの一般ガイドはAIシステムの安全性評価の基本的な考え方を示す資料です。ヘルスケア領域ガイドは、その評価観点を医療・ヘルスケア特有のリスクへ落とし込んだ実務者向け資料です。

一方、PMDAのDraftは生成AIを活用したプログラム医療機器の審査に関する文書であり、一般的な美容AIに直接適用されるルールではありません。本稿では、医療に近い領域で生成AIをどのように評価しようとしているのかを知るための隣接資料として扱います。


最初に知っておきたい5つのこと

  1. AIセーフティ評価は、AIを使わせないためではなく、どのリスクをどう管理するかを明らかにするためのものです。
  2. AISIは2026年7月の第1.20版で、AIエージェントを踏まえ「観測と制御」「自律的な挙動」「外部環境との相互作用」を評価に追加しました。
  3. AISIのヘルスケア領域ガイドは、10の評価観点と5つの開発・運用フェーズを組み合わせ、導入後まで継続して評価する考え方を示しています。
  4. PMDAの生成AI Draftは医療機器が対象です。一般の美容AIにそのまま適用されるものではありません。
  5. 美容業界でも、「便利かどうか」だけでなく、目的・データ・誤情報・公平性・人の監督・外部接続・運用後の監視を考える必要があります。

1.AIは「使えるか」だけでなく「安全に使い続けられるか」へ

これまで生成AIの話題は、「何ができるか」「どの業務を効率化できるか」という活用方法に集中しがちでした。

しかしAIが、単に文章を生成するだけでなく、顧客の質問に答え、情報を検索し、複数のサービスをつなぎ、場合によっては予約変更や外部システム操作まで担うようになると、評価すべき対象も変わります。

私が重要だと考えているのは、次の違いです。

AIの能力が高いことと、そのAIを安全に業務へ組み込めることは同じではありません。

高性能なAIであっても、目的外の回答をする、もっともらしい誤情報を出す、利用者によって精度に差が出る、個人情報を不適切に扱う、外部サービスへ想定外のアクセスをする、といったリスクは残ります。

そのため、AIを評価するときには、「正解率」や「賢さ」だけではなく、AIを取り巻くシステム、利用者、データ、運用方法まで含めて考える必要があります。


2.AISIの「AIセーフティに関する評価観点ガイド」とは

AISIは、AIシステムの開発者や提供者がAIセーフティ評価を行う際に参照できる基本的な考え方として、「AIセーフティに関する評価観点ガイド」を公開しています。

2026年7月7日に公表された第1.20版では、AIエージェントシステムの普及を踏まえて評価観点が更新されました。

AISIは、AIエージェントについて、自律的に行動し、外部システムや物理環境に影響を与え得ることから、従来のLLMだけでは十分に想定されなかったリスクへの対応が必要だと説明しています。

そこで第1.20版では、AIエージェント特有の観点として**「観測と制御」を設け、さらに「自律的な挙動」と「外部環境との相互作用」**に関する評価項目を追加しました。

これは美容業界にも無関係ではありません。

例えば、AIが文章案を作るだけなら、人が確認して投稿することで止められます。しかし将来、AIが予約システムやCRM、メール、SNS、在庫管理などへ接続されれば、AIの出力がそのまま「行動」へつながる可能性があります。

そのときには、「AIが何を答えたか」だけでなく、「何を実行できるのか」「人が止められるのか」を見る必要があります。


3.「観測と制御」が美容AIでも重要になる理由

AIエージェントを安全に使ううえで、私は「観測」と「制御」を分けて理解することが大切だと考えています。

観測とは、AIが何をしようとしているのか、何を実行したのか、後から確認できる状態です。

制御とは、AIの行動範囲を限定し、必要なときに人間が停止、修正、拒否できる状態です。

美容サロンで考えると、例えば次のような場面があります。

AIの利用場面 確認したいこと
AI予約対応 予約の提案だけか、実際の予約変更まで実行できるか
AI顧客対応 顧客情報をどこまで読み込めるか
AI商品提案 商品を推薦するだけか、自動購入・発注までできるか
AI SNS運用 投稿案を作るだけか、自動公開までできるか
AIカウンセリング 一般的な美容情報か、診断・治療に近い判断へ踏み込んでいないか

AIに仕事を任せる範囲が広がるほど、「便利だからつなぐ」ではなく、許可する行動と禁止する行動を最初に決めることが重要になります。


4.AISIがヘルスケア領域専用のガイドを作った意味

2026年4月、AISIは「ヘルスケア領域におけるAIセーフティ評価観点ガイド」を公開しました。

このガイドは、AISIの一般的なAIセーフティ評価観点を、医療・ヘルスケア特有の機微性やリスクへ落とし込み、実務者が使える形に整理したものです。

ここで重要なのは、AISIが汎用的なAI安全性の考え方だけではなく、分野ごとのリスクに合わせて評価方法を具体化しているという点です。

ガイドが想定する主な対象は、AI提供者が開発する**Non-SaMD(医療機器プログラムに該当しないAIプロダクト)**とテキスト生成AIです。BtoCの利用例として、健康相談チャットボット、セルフケア支援、健康管理アプリなども示されています。

一方で、このガイドの対象はテキスト生成AIが中心で、画像生成AIや音声生成AI等は対象外と明記されています。

美容業界には、顔写真・肌画像・動画など独自の論点があります。そのため、私はこのヘルスケアガイドを「美容AIへそのまま適用する基準」としてではなく、業界ごとの安全性評価をどう組み立てるかを学ぶ先行事例として読むことが重要だと考えています。


5.ヘルスケアガイドが整理した「10の評価観点」

AISIのヘルスケア領域ガイドでは、AIセーフティを次の10観点で整理しています。

No. AISIの評価観点 美容業界で考えるときの確認例
1 有害情報の出力制御 危険なセルフケアや根拠を欠く健康情報を勧めないか
2 偽誤情報の出力・誘導の防止 存在しない根拠、誤った成分・機器情報等をもっともらしく出さないか
3 公平性と包摂性 年齢、性別、肌色などによって品質や精度に不合理な差が出ないか
4 ハイリスク利用・目的外利用への対処 美容目的のAIが診断・治療判断へ目的外利用されないか
5 プライバシー保護 顔・肌画像、相談内容、顧客情報を適切に扱っているか
6 セキュリティ確保 プロンプトインジェクションや不正アクセス等へ備えているか
7 説明可能性 なぜその回答・提案になったか、利用者や担当者が理解できるか
8 ロバスト性 言い換え、誤字、曖昧な質問でも極端に回答が崩れないか
9 データ品質 古い・誤った・偏ったデータに基づいていないか
10 検証可能性 問題が起きたときにログや記録から原因を確認できるか

右列は、AISIの公式な美容業界基準ではありません。AISIの評価観点を、鎌田が美容業界の場面に置き換えて考えた確認例です。

この10項目を見ると、AIの安全性とは「有害な回答を出さないこと」だけではないことが分かります。

個人情報、偏り、説明、データ品質、後から検証できることまで含めて初めて、安全性の全体像が見えてきます。


6.安全性評価は「導入時の一回」で終わらない

AISIのヘルスケア領域ガイドは、AIプロダクトの開発・運用を5つのフェーズに分けています。

  1. プロダクト設計
  2. モデル選定
  3. プロダクト実装
  4. プロダクト検証
  5. プロダクト導入・運用

設計段階では、目的・対象ユーザー・ユースケース、AIがやってよいこととやってはいけないこと、法規制、プライバシー、セキュリティ、ログ要件などを整理します。

モデルを選ぶ段階では、用途に適した性能や安全性、ベンダーの信頼性などを見ます。

実装段階では、入力、モデル、出力、RAGなど複数の層で安全対策を入れます。

検証段階では、定量評価、レッドチーミング、専門家レビュー等によって、想定した対策が実際に機能するかを確認します。

そして導入後も、インシデント、誤回答、性能変化などを監視し、継続的に改善します。

私はここが、美容業界にとって非常に大切だと思っています。

「導入したときに大丈夫だった」ではなく、「今も大丈夫か」を確認し続ける。

AIは更新されます。利用するデータも、外部サービスも、利用者の使い方も変化します。評価も一度で終わらせないという考え方が必要です。


7.モデルだけでなく「AIプロダクト全体」を見る

AISIのヘルスケアガイドでは、AIモデル単体だけではなく、実際のプロダクト全体として多層的に安全性対策を組み込む考え方が示されています。

例として、次のような層があります。

層 主な役割 安全性の確認例
入力層 利用者の入力を受け取る 個人情報マスキング、危険入力・不正命令への対策
モデル層 AIが推論・生成する システム設定、出力形式、モデル特性の管理
出力層 利用者へ回答を示す 出力フィルタ、ガードレール、引用・根拠提示
データベース/RAG 外部情報を参照する データ品質、検索品質、アクセス権限
UI/UX層 利用者との接点 注意表示、人への切替、誤解を生まない画面設計
セキュリティ層 システム全体を守る ログ、トレーサビリティ、権限管理

美容AIでも同じ考え方が使えます。

例えば肌相談AIで誤回答が起きたとき、「モデルが悪かった」で終わるとは限りません。

参照データが古かったのか、入力画像の条件が悪かったのか、UIがAIの回答を断定的に見せたのか、人に切り替える導線がなかったのか、原因はシステムの別の場所にある可能性があります。


8.日本では「AIを評価する環境」そのものも整備されている

AISIは2025年9月に「AIセーフティ評価環境」をOSSとして公開し、その後、民間企業等と「AIセーフティ評価環境 検討タスクフォース」を立ち上げています。

2026年4月には、2025年度版の検討報告書が公開されました。

これは、AIの安全性評価を理念だけで終わらせず、実際に評価を行う環境やツールをどう整備するかという議論です。

ここから私が感じるのは、日本でもAI活用の議論が、「使う・使わない」から一歩進み、「どのように測り、検証し、改善するか」へ移っているということです。

美容業界も、この流れを知っておく必要があります。


9.PMDAが「生成AIを活用したプログラム医療機器」のDraftを公表

2026年9月18日、PMDAは「生成AIを活用したプログラム医療機器(Draft)」を公表し、2027年3月17日まで意見を募集しています。

これは、生成AIを活用した**プログラム医療機器(SaMD)**の審査ポイントを整理するためのDraftです。

したがって、美容サロンが使う一般的な生成AI、美容コンテンツ作成AI、すべての肌解析サービス等が、このDraftの対象になるという意味ではありません。

私はここを混同しないことが非常に重要だと考えています。

一方で、医療機器として生成AIを評価する際に、PMDAがどの技術特性を問題として見ているかを知ることは、医療と隣接する美容AIの安全性を考えるうえで有益です。


10.PMDA Draftから見える、生成AI特有の難しさ

PMDA Draftでは、生成AIの特徴として、同じ意味の質問でも表現や会話履歴などによって出力が変動し得ることが論点になっています。

これは生成AIの柔軟性でもありますが、医療機器のように再現性や一貫性が重要な場面では、評価を難しくする要因になります。

さらに、外部システムと連携する場合、接続先やバージョン、可用性の変化によって性能が変わる可能性があるため、外部依存を管理し、変化を監視することが重要とされています。

AIエージェントのように、自らタスクを分解し、外部システムを呼び出しながら段階的に動くAIについては、自律性が高まるほど、人間が設定した制約を迂回したり、前段の誤りが後続行動へ連鎖したりするリスクも考えられます。

PMDA Draftは、想定する自律性の水準に応じて、人による確認・停止・介入の仕組み、行動の追跡・監査、責任の所在を整理する必要性を示しています。

ここは美容AIエージェントを考えるうえでも重要な示唆です。


11.美容AIと医療AIを、同じものとして扱わない

美容業界でAIを考えるとき、「医療に近いから医療AIの基準をそのまま使う」という考え方には注意が必要です。

医療機器規制の対象になるかどうかは、単にAIを使っているか、肌や身体を扱っているかだけで一律に決まるものではありません。個別の製品・サービスの使用目的、機能、標榜、利用方法などを確認する必要があります。

したがって、本稿でAISIヘルスケアガイドやPMDA Draftを取り上げているのは、

美容AIを医療AIと同一視するためではなく、安全性評価の考え方を学ぶためです。

美容AIには、美容ならではの目的とリスクがあります。

例えば、肌の「見え方」を整理することと、疾病を診断することは違います。一般的な美容ケアの選択肢を案内することと、治療方法を決定することも違います。

この境界を曖昧にしないこと自体が、AIを安全に設計する第一歩です。


12.美容AIで私たちが確認したい8つの問い

ここからは、AISI・PMDAの公的資料を読んだうえで、私が美容業界でAIを見るときに確認したい8つの問いです。

これはAISIやPMDAの公式な美容AI基準ではありません。デジラボビューティとして今後検討を深めるための整理です。

観点 美容AIで確認したい問い
1.目的と境界 このAIは何のためのものか。美容目的を越えて診断・治療判断をしていないか
2.情報の正確性 根拠のない回答、架空の情報、断定的な誤回答が出ないか
3.データとプライバシー 顔・肌画像、相談履歴、顧客情報を何の目的で、どこに送信・保存しているか
4.公平性 年齢、性別、肌色、言語などによって性能差や不利益が生じないか
5.人による監督 人が回答を確認し、修正、拒否、停止できるか
6.権限と外部接続 AIが予約、顧客DB、SNS等へどこまでアクセス・実行できるか
7.説明と透明性 AI利用であること、回答の限界、推薦理由等を利用者が理解できるか
8.導入後の監視 モデル更新や運用環境の変化後も、安全性と性能を確認しているか

私が特に大切にしたいのは、8番目です。

AIは導入して終わりではありません。技術が変わるからこそ、評価も更新し続ける必要があります。


13.顔・肌画像を扱うAIは、出力だけを見ればよいわけではない

美容AIでは、顔写真や肌画像を利用するサービスも想定されます。

その場合、AIの結果が正しいかだけでなく、

まで見る必要があります。

また、顔写真そのもの、顔から抽出された特徴量、肌状態の解析結果、AIがそこから推測した情報は、すべて同じものとして扱えるとは限りません。

AIの安全性と、個人情報・プライバシーの問題は別々ではなく、実際のサービスでは重なっています。


14.Human-in-the-Loopは「人が画面を見るだけ」ではない

AI安全性の議論では、Human-in-the-Loopという言葉がよく使われます。

しかし私は、「最後に人が見ています」と言うだけでは十分ではないと思っています。

実質的に人が監督するには、

という状態が必要です。

AIを導入した結果、人間がAIの答えをそのまま承認するだけになってしまえば、形式上は人がいても、実際の監督機能は弱くなります。

美容の仕事では、最後にお客様と向き合い、状況を見て、言葉を選び、必要なら「AIの答えを使わない」と判断できる人の役割が残ります。


15.モデル更新後も「同じAI」とは限らない

生成AIサービスは頻繁に更新されます。

モデルが変わる、検索機能が追加される、外部ツールが使えるようになる、記憶機能やエージェント機能が追加される。こうした変更によって、以前と同じ画面・同じサービス名でも、能力やリスクが変わる場合があります。

そのため私は、美容業界でも次のような再確認が必要だと考えます。

モデル更新 → 変更点確認 → 権限確認 → テスト → 本番利用

特に、顧客データや外部操作権限を持つAIは、「一度確認したから今後も安全」と考えないことが重要です。


16.美容事業者が今から始められる5つのこと

1.使っているAIを一覧にする

文章生成、画像生成、予約、顧客対応、分析など、事業内でどのAIを使っているかを把握します。

2.AIに渡している情報を確認する

顧客名、顔・肌画像、相談履歴、予約情報などが、どのサービスへ送られているかを確認します。

3.AIだけで完結している判断を確認する

重要な顧客対応や提案が、AIだけで確定していないかを見直します。

4.AIの外部接続と権限を確認する

メール、SNS、予約システム、クラウドストレージ等へ何ができる状態なのかを確認します。

5.更新後にもう一度確認する

モデル・機能・接続先が変わった場合は、以前の評価をそのまま使わず再確認します。


17.デジラボビューティが美容業界に伝えたいこと

AIセーフティという言葉を聞くと、とても高度な技術の話に感じるかもしれません。

しかし、私が美容業界の皆さまと共有したい出発点は、もっとシンプルです。

「便利だから使う」から、「理解して、確認して、責任を持って使う」へ。

AIは、美容業界の可能性を大きく広げると思っています。

一方で、美容の仕事は、人の顔、身体、気持ち、自信、選択に近いところにあります。

だからこそ、AIの性能が上がれば上がるほど、人の役割をなくすのではなく、どこをAIに任せ、どこを人が判断するのかを丁寧に決める必要があります。

AISIが一般的な評価観点を整備し、ヘルスケア領域で分野別の評価方法を示し、PMDAが生成AI医療機器の審査ポイントを検討し始めていることからも、日本はAIを「使う段階」から「測り、評価し、安全に社会実装する段階」へ進んでいると私は受け止めています。

デジラボビューティも、これらの公的資料を継続的に確認しながら、美容業界の現場で理解しやすい言葉に置き換え、皆さまと考えていきたいと思います。

一般社団法人デジラボビューティ 代表理事 鎌田麻央


参考資料

  1. AISI「AIセーフティに関する評価観点ガイド(第1.20版)」
  2. AISI「AIセーフティに関する評価観点ガイド(第1.20版)の公開」
  3. AISI「ヘルスケア領域におけるAIセーフティ評価観点ガイド」
  4. AISI「ヘルスケア領域におけるAIセーフティ評価観点ガイド(概要版PDF)」
  5. AISI「AIセーフティ評価環境 検討タスクフォース 検討報告書(2025年度版)」
  6. PMDA「医療機器プログラム(SaMD)の審査ポイントに関する意見募集」
  7. PMDA「生成AIを活用したプログラム医療機器(Draft)」
  8. PMDA「プログラム医療機器」

本稿の位置づけ

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